イロハニトイロ

vol.49-64 支援者が障害を作っている?!

支援しないという支援(9)

前回の続きです

イロハが育んでいるのは“主体性”だというお話を前回させていただきました

“主体性”が育ってくると、自ら考え動き始めます

そしてこの共同体の中で自分には何ができるのかを考え挑戦をし始め、

試行錯誤を繰り返していきます

それは作業の試行錯誤だけでなく、人間関係作りにおいてもです

こうやって自分の人生を主体的に生きられるようになると、とっても生きやすくなります

もちろん仕事もやり易くなります

それではこの“主体性”を育むのにはどうすればいいのか

そこには、失敗や間違いをすることが必要だし、

「愚行権」という大切な権利を認めることでした

しかし「支援しようとする」姿勢があると、支援者の価値観に従わせようとする力が働き、

“正しい者” と “間違っている者”

“優秀な者” と “劣っている者”

“支配する者” と “支配される者” 

という上下の関係が構築されていく

そんなお話をさせていただきました

“主体性”を育むうえでもうひとつの大切な要素のついてもお話させていただきます

それが

「安心・安全」の場を作ること

です

つまり

自分で考え、行動し、試行錯誤し自立に向けて成長していくという“主体性”を育むためには

“勇気”“覚悟”

が必要です

“勇気”って何かというと

やってみる勇気

です

自分がどうありたいか、どうしたいか、考えてもやっぱり行動するって怖いです

失敗したらどうしよう💦

傷付いたらどうしよう💦

それなら苦しくても今まで通りでいい💦

そう思ってしまうものです

だから

“やってみる勇気”

が必要なんです

そして、いざ行動に移せたからといって上手くいくわけではありません

もちろん失敗するかもしれないし

人に嫌わるかもしれない

痛みを負うかもしれない

それでもいいと思える

“傷つく覚悟”

が必要なんです

でもですね

「勇気や覚悟を持て」

なんて言っても簡単に持てないのが私たちです

失敗したら、人から叱られる

間違ったら、人からバカにされる

仲間外れにされる

そんな環境では、なかなか勇気や覚悟を持つのは難しいものです

だからこそ、イロハで大切にしているのは

「安心・安全」の場作りなんです

「安心・安全」の場を作るために大切にしてるのが

スタッフが怒る叱るを使ったコミュニケーションをしない

ということです

相手を怒りで従わせようとするのも

相手を叱りつけるのも

どちらも上下の関係から起こることです

上の立場の人が下の立場の人にする行為です

怒るや叱るを使わなくても、おかしいと思ったらその思いや考えを

相手との間に置いて話し合えばいいだけです

どうしてそうしているのか相手に聞けばいいだけ
(相手には相手の正義と思いがある)

どうして欲しいのか伝えればいいだけ
(自分の要求を伝えないと相手も分からない)

そしてこれからどうしていくのかを共に考えればいいだけ

スタッフが

怒る、叱るを使わない

支援しようとしない

これが、安心・安全の場を醸成し、

自ら考え動き、人と協力して仕事に取り組む“主体性”を育んでいくのだと考えています

それでは、このシリーズも終わりに近づいてきたので、もう一歩奥に進めてみたいと思います

それは“愛”についてです

愛が人を苦しめ愛が人を癒し、人生をより良い方向に変えていく

それが「支援しない支援」の正体だと考えています

“愛”という言葉を使うと一気に宗教っぽさが増しますが、決して宗教が言う慈愛のようなことではありません

愛することは技術だというお話です

「支援しない支援」とは利用者さんを愛するという行為なんだということをご説明できればと考えています

       イロハニトイロ所長
            金村栄治